3.各種効能ガムの素材と機能(2)

(2)ガムの口臭除去効果
口臭は大きく分けて健常者でも認められる生理的口臭、炊食物、嗜好品による口臭と歯周疾患など何らかの疾患により発生する病的口臭、自己臭症の心性口臭に分類される。※17,18

この口臭は呼気とともに口腔内から出る悪臭の総称であるが、すでに口臭に関する一連の研究で臭気物質として、アルコール類、脂肪酸、アンモニア、アミン類、硫黄化合物、フェノール、インドール、スカトールなどが明らかにされている。※17これらの中で、口腔内には多くの蛋白成分や細菌が存在していること、また揮発性や嫌悪性の面から現在では硫化水素(H2S)、メチルメルカプタン(CH3SH)、ジメチルサルファイド(CH3SSCH3)などの揮発性硫化物が注目されている。

ところでチューインガムには元来、歯面清掃効果、唾液の分泌促進、マスキングなどによる口臭を抑制する効果のあることが報告されている。このチューインガムに口臭を除去する素材を添加することにより、より高い口臭除去効果を期待したものが製品化されている。口臭除去をコンセプトとしたこの商品はいつでも手軽に利用できるものとして定着している。
このガムは、現在、緑茶フラボノイドと桑葉クロロフィルのダブル効果に加えて、飲酒後のアルコール呼気臭の低減に効果のあるケンポナシ抽出物を配合し、全体として口臭除去効果を強化した。

これらの口臭除去素材について、まず緑茶フラボノイドから紹介したい。緑茶の消臭に対する効果は先人の経験からトイレの消臭に茶を焚いたり、茶がらをまいて掃除をしたり、台所の臭いを消したりというようなことで利用されており、緑茶と消臭の結び付きは深い。この緑茶から抽出したものが緑茶フラボノイドで、成分的には緑茶特有のカテキンおよび植物体によく見られるフラボノールであるケンフェロール、クェルセチン、ミリセチンなどが存在している。とくにカテキンは緑茶の主要成分であるとともに消臭に対して非常に優れた効果を発揮する。このカテキンはとくに選択的吸着法により茶から分離、精製し、※19その優れた消臭効果を生かしてガムに添加してある。

クロロフィルについては植物から抽出された油溶性の緑色物質で、原料となるクロロフィルは植物全般の葉に分布しており、桑、フェスキュー、コンフリー、蚕糞などを原料として抽出を行っている。工業的に製造されているものは銅クロロフィルとして10~20%程度のものが多い。チューインガムに使用する場合、銅クロロフィルの機能として、単に色素としてではなく口臭除去物質として働いている。

つぎにケンポナシ(Hovenia dulcis Thunb.)に関してであるが、これは北海道から九州、朝鮮半島、中国の広い範囲に分布するクロウメモドキ科の植物である。樹高15~20mの落葉高木で、果実の付いた果柄部は初冬になると肥厚し、肉質となって甘味を生じ、生食することができる。※20古来より、「果柄部を煎じて服用すれば、酒毒を解し、嘔吐を止める作用がある」といわれ、※21酒酔いの解消に利用されてきた。しかし、アルコールを摂取した生体に及ぼすケンポナシの影響について科学的に研究した報告例はなく、近年になってようやく、酒井ら※22により、ケンポナシの熱水抽出物にアルコール投与ラットの血中アルコール濃度を低下させる効果のあることや、永井※23らにより、アルデヒド脱水素酵素欠損型の被験者に対して、ケンポナシの熱水抽出物に悪酔い防止効果のあることなどが報告された。
最近、著者らはケンポナシ抽出物に呼気中のアルコール濃度を低減させる効果のあることをヒトによる試験により確認した。※24ケンポナシ抽出物は乾燥した果実付き果柄部を熱水で抽出し、不溶の夾雑物を除去した後、限外濾過、濃縮、殺菌等の工程を経て調整されたものでグルコース、フルクトース、スクロースなどの糖類の他に蛋白質、ミネラル等の成分を含有している。このケンポナシ抽出物を健康な成人男子8名の被験者に0.125グラム/キログラム体重飲ませて、20分後に0.3グラム/キログラム体重のアルコールとなるように容量を調整したビールを15分間で全量を飲ませた。経時的に呼気中のアルコール濃度を測定したところ、水だけを飲ませたコントロールと比較して、有意に呼気アルコール濃度を低減させた。(図9)。

さらに、健康な成人男子を被験者として、ケンポナシ抽出物を含有したチューインガムのアルコール臭除去効果の確認試験を実施した。アルコールとしてビール(アルコール濃度4.5%)、ウイスキー(同43%)、日本酒(同15%)を用い、それぞれ6~8名の被験者にビールでは500ミリリットル、ウイスキーでは50ミリリットル(ミネラルウォーターで四倍量に希釈)、日本酒では180ミリリットルを15分間に一定のペースで飲ませた後、ケンポナシ抽出物含有ガム(ケンポナシガム)またはケンポナシ抽出物を含有しないガム(無添加ガム)を5分間咀嚼してもらった。ガム咀嚼15分後にAlcomed 3010(Envitec社製)を用いて、呼気中のアルコール濃度(ミリグラム/リットル)を測定した。チューインガムの対照として、何も噛まないときのアルコール濃度をコントロールとした。その結果を図10に示した。無添加ガムではアルコールの種類に関係なく、ガムを噛まないときに比べて、呼気アルコール濃度を低下させたが、とくにビール飲用時には有意な低下を示し、その低下率は17%であった。ウイスキー、日本酒ではそれぞれ7%、6%であった。一方、ケンポナシガムではすべてのアルコール飲料に対して、呼気アルコール濃度を有意に低下させ、ガムを噛まないときに比べてビールでは25%、ウイスキーでは21%、日本酒では28%の低下率であった。さらにケンポナシガムを噛むと、どのアルコール飲用の場合においても、無添加ガムに比べて呼気アルコール濃度を有意に低下させ、その低下率はビールでは10%、ウイスキーでは15%、日本酒では24%であり、日本酒飲用時の低下率が最も大きかった。※25
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