3.各種効能ガムの素材と機能(1)

(1)ガムの眠気防止効果
チューインガムの咀嚼によって眠気防止効果、覚醒効果が現れることは、これまでの実験によって科学的にも明らかになってきている。一般に眠気防止、覚醒効果の試験は、脳波や心拍数、フリッカー値などの測定によって行われている。

単純作業時における意識レベルに対するガム咀嚼の効果として、内田クレペリン作業を参考に作成した一位数加算作業による実験結果がある。※14この結果、脳波では個人差がかなり認められるものの、浅い眠りのときに出現するθ(シータ)波の出現率がガム咀嚼により抑制され、覚醒レベルの低下の抑制が認められた(図7)。また自律神経系の緊張指数である心拍数変動についても高く、正答数の増加がガム使用により認められた。このように作業の単純化に伴う意識レベルの低下が、ガム咀嚼により抑制されることが実験的に確認されている。

さて、このチューインガムの機能に強力ミントと効能物質を配合し、眠気防止機能を高めたガムが製品化されている。使用しているカフェイン、菊花エキス、イチョウ葉エキスの三つの効能物質について触れてみる。

カフェインはコーヒー豆から熱湯抽出、結晶化されたものを利用しており、さらにカフェイン含量の高いガラナエキス(原産はブラジルで古来より不老長寿の名薬として疾病に用いられていた)も添加している。

カフェインは眠気防止に効くことは広く知られているところであるが、その薬理作用は中枢神経系、心臓、循環系、その他に分けられ、かなり広範囲に及んでいる。中枢神経系に対しては少量で興奮作用を示し、最初に大脳皮質、次いで延髄に作用が及ぶ。

菊花エキスの原料、菊花は古くから漢方処方としてとくに眼科領域で広く利用され、また清涼飲料として喫茶用(中国)に利用される経験が長いなど、観賞花のみならず医食に密接に関係を持っている。

その菊花の抽出物(エキス)は局外生規キクカの中切を水蒸気蒸留により抽出、減圧濃縮して得られる。その精油成分はボルネオール、カンファーなどで、カンファーには中枢神経全般の興奮作用があり、これにより大脳皮質が興奮され、眠気や疲労感を取り除く効果がある。

この菊花エキスには毛細血管の抵抗力の増強作用があり、これにより血液循環が良くなり、とくに眼精疲労を防ぐ働きがある。さらに視神経のみならず全身の血液循環を改善し眠気や疲労の回復にも有利に働くといわれている。

つぎにイチョウ葉エキスについてであるが、イチョウ葉の効用については中国で去痰・鎮咳に使用されたほか、日本でも健胃薬として使用されていた。1960年代、ドイツでイチョウの若返り効果について関心がもたれ、フランス、ドイツ、スイスで盛んに臨床試験が行われ、末梢血行改善効果や大脳の血流改善効果などが明らかにされ、現在ョーロッパでは脳機能障害の改善などに薬として使用されている。

このイチョウ葉より抽出されたエキスの有効成分はギンゴライド等のテルペンラクトンである。これらは脳の血液循環の不全やそれに伴う機能障害、たとえば記憶減退、知能低下などに改善効果があり、ボケの改善にも使用されている。また動物での学習能力の向上効果も報告されており、※15脳機能を活性化させ集中力を高める効果が期待されている。

以上、三つ(トリプル)の機能素材を配合したガムについて、最近、JR総合研究所塚本らと覚醒効果に関する共同研究を実施したので簡単に紹介したい。

試験方法は被験者の表情や挙動の変化から覚醒レベルを評価し、その時点におけるまばたき回数および閉眼(徐波)などの生体情報とを関連づけた覚醒レベルの評価法である。具体的には、上まぶたが下がり薄目状態のもうろうとした表情が観察されたときの覚醒レベルを0として、刺激を受けた直後の覚醒レベルを1としたときの皮膚電位(SPL)、まばたきの回数、徐波の累積時間より関係式を立て、覚醒度合いを数値化する方法である。

21~31歳の男女各5名について、各種ガム咀嚼による効果を調べた結果を図8に示す。図中、覚醒レベル(W)は1に近ければ覚醒レベルは高く、0に近ければ覚醒レベルが低下した状態と判断できる。いずれもガム咀嚼開始とともに覚醒レベルが増加する。とくにトリプル素材配合のガム咀嚼の場合は、咀嚼直後の高い覚醒レベルが持続し、咀嚼後期の30分まで高レベルに維持された。またガム咀嚼終了後も覚醒レベルの維持が認められた。
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