2.ガムと咀嚼機能(4)

(4)全身への影響
チューインガムの咀嚼には覚醒作用、※11やリラックス効果※12があるといわれている。これらの二つの作用は相反する関係にあり、チューインガムを摂取するオケイジョンで効果も異なり、ガムの咀嚼がもつ不思議な二面性といえる。

ところで、チューインガムによる咀嚼運動によりこれらの効果が生じることは、咀嚼時のエネルギー需要量変化に応じて覚醒やリラックスに関連する生体の反応性も変化すると考えられる。

そこで心拍数(HR)、血圧(収縮期:SBP、拡張期:DBP)、酸素摂取量(VO2)、脳血流量、鼓膜温、皮膚温や下垂体-副腎および交感神経由来のストレスホルモン(副腎皮質刺激ホルモン:ACTH、アドレナリン:Ad、ノルアドレナリン:Norad)の血漿濃度変化を指標として、ガム咀嚼時および硬さの異なるガムを咀嚼した場合の全身への影響を調べてみた。※13

被験者は17~46歳の健康人男女15名を対象とし、実験結果は以下のようになった。

心拍数(HR)は咀嚼開始と同時に有為に上昇し、咀嚼終了と同時に急激に減少した。咀嚼時のHR上昇程度はガムの硬さに依存した。また毎分換気量(VE)やVO2もガムの硬さに依存して上昇したが、VO2は硬いガムが高く、軟らかいガムで少なくなる傾向にあったものの、VEの変化ほどガムの硬さとの関連は明確ではなかった。いずれのガムもHR同様咀嚼5分以降VE、VO2ともに上昇が僅少となり、咀嚼終了5分後は咀嚼前値に回復した。血圧もHRやVE、VO2とほぼ同様の動態を示した。

一方、鼓膜温は咀嚼開始と同時に有意な減少を示して咀嚼終了後回復し、またドップラー法で測定した総頸動脈血流はガム咀嚼によって増加した。この結果は、ガム咀嚼により脳血流量が増加していることを示唆するものである。

チューインガム咀嚼後のACTH、Ad、Norad濃度については、図6のようにガムの硬さに関係なくいずれも咀嚼後低下する傾向にあった。

ヒトに心理的ストレスや騒音刺激を与えると、血漿コルチゾールやアドレナリン、ノルアドレナリン濃度が上昇する。またラットに対し皮膚を鉗子でつまむ侵害刺激を与えると、副腎皮質活動が高まりカテコールアミン分泌が増すが、ブラシで毛をこすったり、さすると逆に副腎神経活動は一過性に低下し、カテコールアミン分泌も減少することが報告されている。ラットにとって前者は侵害刺激となり、後者はストレス解消になっていると考えることができる。

このようなストレスホルモンといわれるACTH、AdおよびNoradは、ガム咀嚼によって分泌が抑制されるものと推察される。

以上のように、チューインガムの咀嚼には口腔内のみならず、全身にもいろいろな影響を及ぼすことがわかってきた。咀嚼がからだの調整機能に与える影響については、さらに解明されていくものと思われる。

ところで、ガム咀嚼によって血圧が上昇したことから、咬筋活動(咀嚼運動)は末梢細動脈血管に分布する交感神経系の興奮を促進することが考えられる。一方、ガム咀嚼時の内分泌反応から推察すると、ガム咀嚼によって交感神経系の活性が抑制されたことが推刺される。

この相反する結果は、チューインガムのもつ覚醒作用とリラックス効果の相反する作用をそれぞれ裏付けてはいる。しかし生理、心理的立場から今後さらに詳細な研究を進めて明確にする必要もあるだろう。
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